先日打ち合わせをした手品王子と涼とのコラボ撮影が、今日行われた。手品王子が涼にインタビューをするという形式だ。場所は新宿だった。
「マルイの屋上にね、いい庭園があるんですよ」
 手品王子がそう言って先を歩き、涼はそれに続いた。庭園での収録など、涼には想像もできないことだ。いや、そもそもインタビューされることさえ、未知の領域である。打ち合わせをしていたとはいえ、先の展開は今ひとつ読めないでいた。
 マルイのビルに到着した手品王子と涼は、エレベーターで屋上へと移動する。と、ふたりの目の前には、とてもビルの屋上とは思えない緑豊かな庭園が広がっていた。手入れの行き届いた芝生に、きれいに舗装された小道。ベンチやテーブルが並び、憩いのひと時を満喫できる作りになっている。テーブル席で歓談を楽しむカップルに、ベンチに並んで座るカップル、そして芝生で寝転がるカップル。カップル。カップル。
「カップル客が一番マジックに反応してくれるんです」
 人が集まる場所に来ると、涼は、つい自分がパフォーマンスをする姿を想像してしまう。パフォーマンスがしやすそうな人ばかりが目に入ってしまうのだ。
「まぁ、でも今日はそういうことではなく」
 涼は、手品王子のインタビュー撮影のために来ているのだ。パフォーマンスをしに来たわけではない。
 手品王子と涼は、庭園の片隅にあるテーブル席に座った。
「ここで撮影しましょう」
 手品王子が言ったので、
「いいですね」
と、涼も応じた。が、すぐに問題に気付いた。
「ここ、まぶしくないですか?」
 直射日光がふたりの眼球に直撃していた。
「確かに」
 手品王子はそう言って、太陽がふたりの背中に来るようにカメラを位置取る。しかし、そうすると、今度は、
「逆光でカメラに映らなかったりしませんか?」
という問題が浮上してくる。
「確かに」
 ふたりは、少し時間を置き、日が傾くのを待った。やがて、日光が当たらなくなったところで、ふたりは再び撮影を試みる。しかし、今度は、それとは別の問題があるのに気付いた。
「ここ、うるさいですよね」
 手品王子が気付き、
「確かに」
と涼も頷く。ビルの換気用のファンの音だろうか、ゴォーと強風が吹いているような音が聞こえていた。
「ちょっと試しに撮ってみますね」
 手品王子が試撮影し、その動画を再生してみる。ゴォーという音ばかりが聞こえて、ふたりの会話はほとんど聞こえない。
「ここじゃ、ちょっと無理ですよね」
 手品王子は、庭園をぐるりと回り、他のテーブルやベンチを偵察したが、空いている席は今のところない。
「場所、変えましょうか」
「そうしましょう」
 ふたりの意見はすぐに一致し、撮影場所はカラオケ店へと変更された。

 カラオケ店にする、とは言うものの、特に目星がついていたわけではない。しかし、そこはさすが新宿と言うべきか、犬が棒に当たるのと同じように、人が歩けばカラオケ屋が見つかるものだ。ふたりは店内に入り、約2時間を使って収録した。
 収録した動画は、編集の後に手品王子がアップロードすることになった。
 そのときは涼のブログでも紹介することになるだろう。

    →  10月3日コラボインタビュー(手品王子さんより)    
 




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