「マジック・オア・トリート!(お菓子をくれないとマジックを見せるぞ)」
と言ったわけではなかったが、それでも、涼のチップ箱にはお菓子が入った。ハロウィンでは不思議なことがあるものだ。



 今日の警固公園には多くの人がいた。サンタクロースもいれば、ウォーリーの格好をしている者もいる。



 地元からやってきた、という人が多かったが、 涼の観客の中には、佐賀や長崎や、奈良から来たという観光客までいた。
 友人の助言により、涼もハロウィンにあやかって、さり気なくかぼちゃのバッジでもつけておこうかと思い、街を歩いてはみたが、福岡の商店街ではほとんどハロウィングッズを取り扱ってはいなかった。どの店でも店頭にグッズを並べているに違いない、と思った涼が目測を誤ったともいえる。福岡では、ハロウィンよりもむしろソフトバンクホークス優勝のほうが大きなニュースなのだ。ホークス優勝セールの垂れ幕は、どこそこにかけられていた。
 涼は、今日36回の演目を行い、13000円ほどのチップを得た。1回あたりのチップ額は多いほうではなかったが、まずまずのチップを手にすることができた。新しいスニーカーと新しいトランプとICカードのチャージで、すべて使ってしまったのではあるが。 

 


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