今日、涼のところに来た観客は、小さな子供とその父親、とか、子供とその母親、というのが多かった。やはり、マジックは子供の目に届くらしかった。
  毎度のことではあるが、子供と母親のときには、チップの話を切り出しにくいものだ。子供が勝手に飛び込んだおもちゃ屋で、それを追ってきた母親が支払いを受けるようにも思われかねない。父親であればいいのだが、子供を守る母親は、とかく用心深いのだ。
  そんな母子が観客だったので、涼はチップの話をせずに演目を終えたのだが、後になって、お礼だと言ってお菓子を買って持ってきてくれた。そのとき涼には別の観客がいて、その観客がチップを入れているのを見て、母子もチップを入れようとしたのだが、お菓子ももらってチップもいただくのも申し訳ないので、涼はお菓子だけを受け取った。とても喜んでくれていたようで、サインをしてください、と嬉しそうに言うのが、涼にも嬉しかった。



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