涼がよく行っていた警固公園 で、賃金引上げのデモがあっていたのだと、今朝の朝刊で知った。
「昨日はそっちには行かなかったからなぁ」
直接見たわけではないが、新聞によると、現在の743円から1500円に引き上げようというデモ活動のようだった。
「ずいぶん大きく出たなぁ」
2倍以上の増額を求めるというのは、プロ野球で言うと、3割30本30盗塁のトリプルスリーを取りでもしなければ難しいようにも涼は思う。
「それはそうと、賃金が1500円になったら暮らしは豊かになるのかな」
涼には疑問である。手取りが上がれば豊かになると、単純にはいかないのだろうと思うのだ。
「さほど経済がわかっているわけではないけど」
さほどわからなくても、単純でないことは容易に想像がつく。
「だいたい、最低賃金が上がれば、デモの人たちは、人を雇った時に1500円の給料を支払いたいと思うのだろうか」
743円の賃金が1500円になれば、従業員に多くの給料を支払わなければならないが、それを望んでいるのだろうか。それとも、そもそもデモ活動をする人々の中には、経営者はいないのだろうか。経営者と雇用者では、意見が異なるのは想像に難くない。たとえば、
「うちの会社にはボーナスがないんだ」
と言われると、雇用者は、
「なんてひどい会社だ」
と言い、経営者は、
「なんていい会社だ」
と言うことだろう。
単純に暮らしが豊かにならないと涼が思う理由はこういうことだ。
「スーパーやディスカウントショップが安いのは、賃金が安いからだよね」
ということである。賃金が上がれば、その分のコストは商品に乗るはずなので、消費者の支出は大きくなる、と涼は考える。
「それに、そういう店が安く売ろうと努力するのは、消費者の手取りが少なくて、安いものしか買えないからだよね」
ということは、消費者たちの手取りが大きくなれば、スーパーも安く売る努力をする必要がなくなる、ということになる。手取りが増えて、物価が上がるとすれば、相対的にはあまり変わらないような気がするのだ。
「まぁ、あまり変わらなくても、それはそれでいいのかもしれないけど」
相対的に変わらなくても、金銭の流通量が増えるのなら、経済的にはそれがいいのかもしれない、と漠然と涼は思う。
涼が得られるチップも、おそらく経済に依存することだろう。最低賃金が上がれば、涼のチップ箱にも多くのチップが入るのかもしれない。と、好意的に考えたいところだが、
「とはいえ、収入が増えても、同じように支出を増やしたくないと考えるのが人間心理。貯金が増えなければ、みんな満足しないと思う」
ということを思うと、結局チップを入れない人は、収入が上がっても入れないのだと思うわけである。
涼としては、すぐに恩恵を受けられることもないだろうと、そう思うのだ。
経済学というよりは、心理学による部分が大きいのではないかと考えるわけである。
「賃金もチップ制にすればいいのに」
と、涼は奇抜なことを考えたりもする。会社にもたらす利益に応じて手取り額を決める……要は出来高制度であるほうが、フェアはフェアだと思う。もちろん、会社側もフェアだという前提に基づくことではある。
「それか、雇用者が自分で給料決めたらどうだろう」
1000万円の給料が欲しいと雇用者が言えば、その通りの給料になる、というシステムだ。そして、会社は、その給料に見合うと思えば雇うし、見合わないと思えば雇わない。それもそれでフェアだろうと思う。
1000人企業の売り上げは概ね1000億円であり、10000人規模の企業は1兆円ほどであるので、大企業の1人当たりの売り上げは、平均して1億円ということになる。それでいて、年収はと言うと500万円ほどであったりもするので、年収の20倍の売り上げに貢献するのが、大企業の一般平均であると言える。1000万円の年収を提示すれば、平均の2倍の2億円の売り上げに貢献する必要があることになるが、それに見合う仕事ができると思えば、その額を提示すればよい、ということになる。もちろん、自分の価値を提供するのは、直接の売上額だけとは限らないが――売り上げが変わらなくても、コストカットなどで利益が増えることもあり得るし、利益率の高い事業を展開できることもある――その人物がいるのといないのでは売り上げ換算で2億円以上の差が出る、というのが会社の判断基準になることだとは思う。
涼のスタイルがそうであり、実際やっていてそれがフェアであるように感じているので、そのシステムを導入するという手もあるはずだ。涼の1度の演目で、2000円の価値を感じてくれる人もいるし、1円や0円の人もいるが、それでいいと涼は思っている。涼の実力をそのように判断してくれているのであれば、涼はそれに不満はない。
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「昨日はそっちには行かなかったからなぁ」
直接見たわけではないが、新聞によると、現在の743円から1500円に引き上げようというデモ活動のようだった。
「ずいぶん大きく出たなぁ」
2倍以上の増額を求めるというのは、プロ野球で言うと、3割30本30盗塁のトリプルスリーを取りでもしなければ難しいようにも涼は思う。
「それはそうと、賃金が1500円になったら暮らしは豊かになるのかな」
涼には疑問である。手取りが上がれば豊かになると、単純にはいかないのだろうと思うのだ。
「さほど経済がわかっているわけではないけど」
さほどわからなくても、単純でないことは容易に想像がつく。
「だいたい、最低賃金が上がれば、デモの人たちは、人を雇った時に1500円の給料を支払いたいと思うのだろうか」
743円の賃金が1500円になれば、従業員に多くの給料を支払わなければならないが、それを望んでいるのだろうか。それとも、そもそもデモ活動をする人々の中には、経営者はいないのだろうか。経営者と雇用者では、意見が異なるのは想像に難くない。たとえば、
「うちの会社にはボーナスがないんだ」
と言われると、雇用者は、
「なんてひどい会社だ」
と言い、経営者は、
「なんていい会社だ」
と言うことだろう。
単純に暮らしが豊かにならないと涼が思う理由はこういうことだ。
「スーパーやディスカウントショップが安いのは、賃金が安いからだよね」
ということである。賃金が上がれば、その分のコストは商品に乗るはずなので、消費者の支出は大きくなる、と涼は考える。
「それに、そういう店が安く売ろうと努力するのは、消費者の手取りが少なくて、安いものしか買えないからだよね」
ということは、消費者たちの手取りが大きくなれば、スーパーも安く売る努力をする必要がなくなる、ということになる。手取りが増えて、物価が上がるとすれば、相対的にはあまり変わらないような気がするのだ。
「まぁ、あまり変わらなくても、それはそれでいいのかもしれないけど」
相対的に変わらなくても、金銭の流通量が増えるのなら、経済的にはそれがいいのかもしれない、と漠然と涼は思う。
涼が得られるチップも、おそらく経済に依存することだろう。最低賃金が上がれば、涼のチップ箱にも多くのチップが入るのかもしれない。と、好意的に考えたいところだが、
「とはいえ、収入が増えても、同じように支出を増やしたくないと考えるのが人間心理。貯金が増えなければ、みんな満足しないと思う」
ということを思うと、結局チップを入れない人は、収入が上がっても入れないのだと思うわけである。
涼としては、すぐに恩恵を受けられることもないだろうと、そう思うのだ。
経済学というよりは、心理学による部分が大きいのではないかと考えるわけである。
「賃金もチップ制にすればいいのに」
と、涼は奇抜なことを考えたりもする。会社にもたらす利益に応じて手取り額を決める……要は出来高制度であるほうが、フェアはフェアだと思う。もちろん、会社側もフェアだという前提に基づくことではある。
「それか、雇用者が自分で給料決めたらどうだろう」
1000万円の給料が欲しいと雇用者が言えば、その通りの給料になる、というシステムだ。そして、会社は、その給料に見合うと思えば雇うし、見合わないと思えば雇わない。それもそれでフェアだろうと思う。
1000人企業の売り上げは概ね1000億円であり、10000人規模の企業は1兆円ほどであるので、大企業の1人当たりの売り上げは、平均して1億円ということになる。それでいて、年収はと言うと500万円ほどであったりもするので、年収の20倍の売り上げに貢献するのが、大企業の一般平均であると言える。1000万円の年収を提示すれば、平均の2倍の2億円の売り上げに貢献する必要があることになるが、それに見合う仕事ができると思えば、その額を提示すればよい、ということになる。もちろん、自分の価値を提供するのは、直接の売上額だけとは限らないが――売り上げが変わらなくても、コストカットなどで利益が増えることもあり得るし、利益率の高い事業を展開できることもある――その人物がいるのといないのでは売り上げ換算で2億円以上の差が出る、というのが会社の判断基準になることだとは思う。
涼のスタイルがそうであり、実際やっていてそれがフェアであるように感じているので、そのシステムを導入するという手もあるはずだ。涼の1度の演目で、2000円の価値を感じてくれる人もいるし、1円や0円の人もいるが、それでいいと涼は思っている。涼の実力をそのように判断してくれているのであれば、涼はそれに不満はない。
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コメント
コメント一覧 (2)
生活保護を引き合いに出すと、余計に賃金を上げたほうがよいという結論になるとは思いますよ。
生活保護のほうが高いほうがよい、という結論にはならないと思いますので。