無料トライアンフ、チップ制アンビシャスカードというのは、非常にやりやすかった。トライアンフではチップを貰わないと決めてしまうと、自分の中で非常に明確な区分ができた。であるから、涼は、マジックに興味を持ってテーブルにやってきた観客に、無条件にトライアンフを振る舞うことができた。チップの話をするのは、その後である。
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「チップ制でよければ、引き継ぎ、もっと不思議なマジックをお見せできます。どうします?」
と言うと、チップに乗り気でない観客は、
「いえ。じゃあ、ここまででいいです」
と言うし、もっと見たい観客は、
「払います!これは払ってでも見たい!」
というような反応になった。そして、その結果、観客のチップ額は、常に500円を超えた。1000円札も多く入った。
今日がたまたま上手くいっただけかもしれないが、このまま上手くいくのなら、涼としても非常に嬉しいことである。マジックに興味を持つ全ての人に、短いながらも本格的なマジックを無料で見せることができる。その上で、より長く見たい観客のほうに、より多くの時間を割くことができる。アンビシャスカードまで見てくれる観客は、自分の意思でチップを入れる決断をしているので、10円や1円ということもなく、500円や1000円を快く出してくれた。涼としても、たくさん出してくれた人にたくさん見せてあげたいところだった。そして、
「他にも何かありますか?」
と言われれば、これも快く別のマジックを演じられるというわけだ。
1組おもしろい観客がいた。続きを見たいのだけど、財布の中の小銭が1円しかなくて、それで見せてもらうわけにもいかないと悩み、相方の財布も広げて見て、そこにも数十円しかなかったようで、見たいけど見れない、と苦悩していた。そこまで見たいのなら、と涼は思い、
「まあ、見た後で考えていただいてもよいですよ」
と演目を披露した。すると、観客はいたく喜び、そんな小銭で悩んでた自分がけしからん、とでも言うように1000円札を入れてくれた。とても良い観客だった。
平日であったが、年末の観客は多い。
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