演目をしていると、今度は、
「誕生日のパーティーとかに来てもらえるんですか?」
と声がかかった。日本でも、そのくらい依頼があればよいのだが、カタコトの海外の方がよく声がかかるのは不思議な話だ。しかし、残念なことに、数日後には帰国してしまう身であるので、依頼を受けることはできない。
「I'm sorry」
と断らねばならぬのが惜しい事情だ。

  オーストラリアでは、1回のチップ額は小さいが、1回の公演時間も短い。ものの1分や2分で満足してくれる。長い方がチップが増えるということはなく、むしろ、
「もうひとつ面白いマジックをお見せしますよ」
と、いらぬ親切心を回すと、すぐに飽きてしまうのか、演目が終わる前に観客が立ち去ってしまい、結局チップは得られない。長く演じるとチップが減る、という不思議な状況である。涼のマジックは、ここシドニーでは薄利多売だ。2分の公演で2ドルを得る。それを50回繰り返して100ドル、というところである。
  現場はあまりクリエイティブなものではない。愚直に同じことの繰り返しだ。たまに、少しだけ会話ができると、
「ニュージーランドから来たんだ」「僕たちはブラジルから」「フィリピンだよ」
と、観客がグローバルなのが嬉しいところである。