涼は京都へとやって来た。



  言わずと知れた京都タワーだが、それほど観光客が多いわけでもない。それは京都に限らず、今となっては東京タワーもスカイツリーも同じ程度である。
  涼の狙いは、二条城と嵐山だった。

「だけど嵐山と言っても、どこに行けばいいんだろう」
  昔行ったことはあるのだが、電車で行ったわけではないので、どの駅か、と言われるとよくわからない。
  涼はひとまずJRで嵯峨嵐山へと移動した。そこから嵐山まで嵐電(らんでん)であと1駅だ。
「これに乗り換えればいいのかな?」
  涼は、目の前にあったトロッコ列車へと乗り換える。2分ほどの距離なのに、
「620円になります」
と言われ、
「高いなぁ」
と思って乗ったのだが、乗った後の車内放送で、それが遊覧列車であることを知った。30分ほど遊覧して、また戻ってくる、という観光用の列車である。確かに嵐山にも停まるのだが、それは嵐山から遊覧する観光客用のためのもので、そこで降りる乗客はいない。涼だけだった。
「これじゃない電車に乗らないといけなかったのか」
  ずいぶんと高い交通費を支払って、涼は嵐山へとやって来た。が、そこは、涼が思っていた嵐山とは違っていた。


「あれ?どこだ、ここは?」
  嵐山も広かった。涼は30分ほど散策し、やっと涼の記憶にある嵐山に辿り着いた。


「これだ!!」
  しかし、とは言うものの、この混雑ぶりで涼が演じられるはずもない。涼はまた場所を変えた。


「うーむ」
  ここも観光客は多いが、歩道がない。パフォーマンスをすることができない。
  さらに散策すること30分。やっと涼がパフォーマンスできそうな場所が見つかった。
  さっそく、そこで演じてみたのだが、通行人の反応は大阪寄りだった。
「ここの観光客は大阪人でも京都人でもないのに、なぜだ?」
  どちらかというと、奈良と同じ客層であるだろうのに--同じ客層どころか、同じ修学旅行生がいたようだった--、奈良のときのような反応にはならなかった。

  あまり、よい結果を残せなかったが、この日はそこで引くことにした。その後、二条城へと移動した。が、しかし。
「あらためて見てみると、こうなってたのか」
  1度は訪れたこともある二条城だが、涼と同じように電車を利用する観光客は少なく、多くは車で来て駐車場を利用していた。駐車場は当然敷地内にあるし、入場門の正面でもある。涼がパフォーマンスを行う隙はない。
「しまった。気付かなかったなぁ」
  観光客は確かに多いが、駐車場と正門の間に分布するのみだった。

  京都でのパフォーマンスも、また一苦労ありそうな予感がする涼である。