昨日のことだ。日も暮れてきたところで、涼は京都駅の付近へと赴いた。大々的にデモ活動をしていたので、
「これはいける」
と涼もパフォーマンスを始めた。
デモに許可が下りるとも思えない。1時間以上も続いていたので、これを静観しているとすれば、ストリートマジックに目くじらを立てるとも思えない。
--と涼が思う時には、だいたい思惑通りにはいかない。演目を始めて程なく、
「ここではやらないでください」
と声がかかった。見ると、警察ではなく、駅員だった。
「ここは駅の私有地なんですか?」
と涼は驚いて聞いた。車道を1本挟んだ向かいの歩道に涼はいたのだ。公道--だと涼は思っていた--であり、郵便局の正面だったので、注意を受けるならば、警察か郵便局のどちらかだと思っていた。しかも、デモを静観している警察も、18時を過ぎた後の郵便局も、それほど涼を問題視しないだろうと思っていたのだ。
「まさか車道のこっち側まで駅の領土だったとは」
と涼は小さく呟いた。
「そうですか。お手数をおかけしました」
涼がテーブルを畳んでいると、そのときいた涼の観客が、
「ちょっと!どういうこと!」
と駅員に食ってかかった。
「どうしてアレが良くてマジックがダメなのよ!」
とデモを指差す。
「あちらは駅の管轄ではありませんので」
と駅員は言う。それはわかるが、こっちは管轄だったのか、と涼は残念な気持ちで片付けを続けた。駅とデモは南北方向に車道を挟み、駅と涼は東西方向に車道を挟んでいた。
「道1本向こうは、私たちが何を言うこともありません」
じゃあ、あっち側ですればいいじゃない、と観客が涼に言うが、今まさしくデモが行われているのだから、行けるはずもない。返す刃で、観客は駅員に、
「ここでやってて何が悪いの!誰も困らないでしょ!」
と食いつく。続け様に、
「あんたたちが来たせいで、もっとマジック見たかったのに見れなくなったじゃない!」
と、口を休めない。
駅員が困っていたので、
「いえ、そういうことではないんですよ」
と涼が駅員をフォローする。涼の味方をしてくれている観客に対し、涼が駅員を庇うような発言をしている光景が、自分でもおかしかった。誰が誰のために発言しているのか、と。
それはそうと、京都でもパフォーマンスの場所は少ないことがわかってきた。
「関西はパフォーマンス王国というイメージがあったんだけどなぁ」
実際は取り締まり王国だった。警察も駅員も、よく働く。
涼ははじめ、日本人はあまりパフォーマンスに飛びつかない文化の国民だから、海外からやってみよう、と考えてヨーロッパへと渡った。しかし、実際やってみて、飛びつかないのではなくて、取り締まられてしまうのだと知った。日本であまりパフォーマンスが盛んでないのは、保守的だという性格上のことではなかった。
「むしろ、結構飛びつかれる気がする」
しかし、関西での仕事は、なかなか難しいというのが今の手応えだ。
コメント
コメント一覧 (4)
京都は結構マジック見るの好きな人が多い印象があります。
基本的に歩道が狭くて、やれる場所がかなり限られますが…
ちなみに、デモは許可取ってるはずですよ…昔々中学の社会科でならった気がしますが
、デモは憲法で保障された権利なので道路占有許可がとりやすいとかなんとか(記憶が曖昧なので違うかも?)
ジャンさんも京都におられるんでしたよね。
どこかやり易い場所はご存じないですか?
やったときの反応は良いのですが、やれる場所があまりなく。。。
デモは許可取り易いんですね!
知らなかった。。。
わりと過激なことやってる気がしますが、確かに権利といえば権利ですね。
社会科の授業で習ったといえば習った気もしますが、許可とか申請の話は全く知りませんでした。汗
(アンプを使ってる人もいます)
なるほど!
情報ありがとうございます!