パフォーマンスをやり易い場所とやりにくい場所がある。涼が好んでやるのは、広い歩道ーー車が離合できるほどのーーで、車道とは段差や柵で区切られていて、しかも背中側がガードされているような場所だ。
  街中でよくあるのがこれだ。


  電力会社の配電盤、的なものが入っているのだろう。あちこちにあるので、涼には都合がいい。
  仮に車道から車が突っ込んできても、少しはマシだろうという考えのもとである(配電盤がショートして爆発するようなことがあれば別だが)。段差プラス柵プラス配電箱(的なもの)があれば、非常に心強く、地下鉄の入り口でもあれば最高だ。レンガの家は狼でも入れない、というのは『三匹の子豚』でも証明されているのだ。レンガ造りの地下鉄の入り口を背にすることができるなら、この上なく心強い。

  さて、涼は今日も嵐山へと足を運び、
配電箱の前で演じる。今日の観客は、8割方、外国人旅行客だった。良くも悪くもない手応えだった。
  夕方になると、鴨川の畔へと移動した。三条あたりで、パフォーマーがいたりもする、と聞いたからだ。
  この日はパフォーマーはいなかったが、ミュージシャンなどがやり易そうな場所だった。地元人の憩いの場、でもあるのだろう。


  実際、涼もパフォーマンスを演じてみた。が、人の流動はあまりなく、そう何度も演じることはできなかった。川の方を向いて座っているので、座り客にホッピングで演じることもできない。背後から接近するのは好まれないのだ。
  この日は風ばかりが強く、涼はさっさと引き上げた。移動した先は、京都タワー前だったが、今日もまた、あまり観客は来なかった。
  京都駅前よりも、三条駅前のほうがもしかしたらいいのかも、と涼は思いもする。
「ま、でも京都も今日までだからね」
  明日は福岡に戻る予定だ。