宿に泊まっているときや、パフォーマンス終了後にテーブルをたたんでいるとき、涼はたびたびアンケートを受ける。
「お忙しくなければ、少し質問をしたいのですが」
といった感じだ。女子中学生が数人、といったところである。
「何でしょう?」
  そうは言うものの、
「今日はコーヒーを飲みましたか?この宿は初めてですか?この町は好きですか?」
などと質問を受け、涼も意図がわからず、困惑しながら答える。
  しかし、何度も質問を受けているうちに、涼にも徐々にわかってくる。質問型のビンゴゲームだったのだ。質問にヒットした人にサインをもらって、列を揃える、というルールである。ゲーム参加者は、通行人に、
「朝食はパン派ですか?ご飯派ですか?」
というような質問をするわけである。アメリカでは、
「パン派ですか?シリアル派ですか?」
という質問になるようだったが。
  また別のアンケートは、社会科の授業で、道行く人に、いろいろな質問に答えてもらうもののようだった。こちらの方は、質問内容が難しい。「イエス」「ノー」クエスチョンではなく、オープンクエスチョンだった。
「お国の美味しい料理を教えてください」
だとか、
「旅行で行ったところで、どこが一番良かったですか?」
などの、少し考えさせられる質問だった。
  それだけでなく、涼は道もよく聞かれる。
  しかし、涼は言葉が堪能ではない上に土地勘がないので、何も答えられない。質問の意味がわからないこともよくあることだ。たまに答えられることがあるといえばあるが、そんな涼に何故質問が集まるのかは不思議なところだ。
「まあ、ただ、別に悪いことではないんだけどね」
  少し英語の勉強になっているので、そう拒絶するようなことでもない。が、
「ジーザスを知っていますか?あなたの心にジーザスはいますか?」
というような、宗教じみた怪しい質問者もいるので、ある程度、判断する必要はある。