そう何度も落としたわけでもないのに、スマホカバーガラスがよく割れる。


 観客が涼のマジックテーブルにぶつかって落下したこともあるにはあるが、そうでなくても、ポケットの中で割れることが往々にしてある。
「エッジが立っているからかなぁ」
 最初にガラスの縁が欠けてきて、そこから徐々にヒビが広がっていくのだ。
「まだ3ヶ月しか経ってないのに」
 涼の記憶としては、海外でよく割れる印象だ。オーストラリアで割れて、買い直して、アメリカでまた割れて。そしてまた買い直したところだ。

 おそらく涼だけではないのだろう。 涼のところに来る観客のスマホを目にすることもよくあるが、涼以上の破損状態のカバーガラスをしていることも珍しくはない。クモの巣のデザインのカバーガラスなのかと思うこともよくある。それでいて、そのほとんどが、特に気にするようでもない素振りであるので、割れた状態が当たり前になっているようでもある。
 一度、涼の目の前で観客がスマホを落として涼が拾い上げたのだが、そのときに割れていることに気付き、
「割れましたよ!」
と涼は慌てたのだが、その観客は事もなげに、
「ああ。最初からですよ」
と言ったので、割れたものを割れた状態のままにしておくのも普通のことだと知ったものだった。

 それはさておき。涼は割れたものを割れた状態でおくのは少々気になる質である。
 今度は、縁が切り立ったものではなく、丸みを帯びたカバーガラスを買った。
「これで縁が欠けるのも、少しは防がれるだろう」
 しかし、ハンマーでたたいても割れないことを売りにしているハードカバーガラスが、横から欠けていくことを計算していないというのは、なんとも建前主義である気がしてならない。
 消費者がそこまで見抜かねばならないと思うと、ガラス1枚買うにも気を使わなければならなさそうである。

 

 
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