涼は今日、昼は太宰府で、夜は天神でストリートマジックを演じた。福岡でのことである。
  合計で20回以上は演じたので、それほど観客が少ないということはなかったのだが、しかし、得てして、観客は涼が移動しようとしたときにやって来る。「そろそろ移動しようか」「そろそろ休憩しようか」「そろそろ帰ろうか」のタイミングである。
  来てもらえて嬉しいのは確かなのだが、狙った通りの動きができず、機を逃しているようにも感じてしまうのだ。
「電車乗り損ないそうだったし」

  それはさておき、日が暮れると、震えるほどに気温が下がってきた。指先の感覚が鈍くなる。居酒屋に慣れると、ストリートの過酷な環境がツラくも思えてくる。チップの額が小さいこともあり、収入を得るのに一苦労だ。
  しかし、不思議なことに、それが何だか心地よくも思える。これが原点だ、と思えるからだ。
  涼がストリート出身だからなのだろう。結局、ストリートで演じることが、最も良い訓練になると、涼は感じている。
「何より、辛抱強くなれる」

 

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