新年を迎えると、いきなり小春日和だった。暖かい春の天気にも思えるし、涼しい夏の天気にも思える。

  涼が元日に向かったのは、やはり太宰府天満宮だった。


  お参りと仕事場が同じだというのは、ある意味ありがたい。

  涼が福岡で仕事ができているのは、ひとえに太宰府天満宮への参拝客が多いからに他ならない。
「日頃の感謝をしなければ」
  涼は、賽銭箱の前で財布を開く。
「よし!これを入れよう!」



  涼は思い切って、掴んだお札を投げ入れた。
  二礼。二拍手。一礼。
「今年もよろしく……」
  言おうとして、涼は口ごもる。
「違うなぁ」
  ついつい『お金を入れたのだから、その代わり、よろしくしてね』というような心境になってしまう。
「そうではなくて」
  去年、参拝の観光客にたくさんチップ入れてもらえたので、感謝の気持ちとして、ということでなければならない。
  未来に見返りを求めることはできない。過去への感謝の気持ちとしての賽銭。
「いつもありがとうございます」
  涼は心の中で、感謝の言葉を述べた。

  その後、いつもの福太郎前で涼はパフォーマンスを演じた。大賑わいで大忙しの日となった。
「早速、ご利益があったかな」

 
 

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