カード当てマジックを演じようとすると、たまに、当てるよりも前にカードを言ってしまう子供がいる。
これは、別に、マジシャンを困らせようとしているわけではなく、うっかり口に出してしまう、ということなのだが、割りと多いパフォーマンス事故のひとつである。
小さな子供は、たくさんの指示を同時にこなせないので、
『カードを覚える』『それを口に出さない』『お父さんやお母さんにカードを見せる』『でもマジシャンには見せない』というようなことをさせてしまうと、高確率でマジシャンに秘密を漏らしてしまう。興味深いことに、念を押せば押すほど、より高い確率で秘密を漏らしてしまう、というのが、涼の統計である。
念を押すと、子供は頑なに秘密を漏らすまいとするのだが、たとえば、秘密を漏らさないための方法として、マジシャンに背を向けたりするので、つまりカードの面をマジシャン側に向けてしまう、というような失敗をしてしまう。他にも、秘密を漏らしたくない気持ちでカードを強く握りすぎ、カードが曲がってしまうのですぐわかる、といったこともある。普通にしていれば漏らさずに済む情報を隠そうとすることで、わざわざ見せてしまう、というようなことも多い。
さて、期せずしてカードがわかってしまうと、マジシャンとしては都合が悪い。
「では、別のカードを使いましょうね」
と、カードを変更できる場合はよいが、どうしてもそのカードでなければならないマジックもある。
今となっては、途中からマジックを切り替えることもそう困難ではないが、涼もマジック初心者だった頃は、こういう事故に泣かされたものだった。
そして、より厳密に言うと、『見えた』ことが重要ではなく、『見えたと思われた』ということが重要であるので、
「今、見えました?」
と言われなければ、見えていても見えていない体で演技を続けることも、今ではよくあることだ。逆に、見えていなくても、チェンジ要求があればチェンジする。重要なのは、事実よりも、観客の印象であることが、長く演じているとわかってくるものである。
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コメント
コメント一覧 (8)
そもそもトランプなど近頃は日常生活で見る機会もなく、非手品人の私など「トランプとはマジシャンの為にある」と感じているくらいです。
恥ずかしいことに「スペード」と言う言葉出てこない時があるし、11.12.13相当するカードの判定さえ怪しいです(笑)
ジャック、クイーン、キングがパッとは出てこない人は多いです。
マークがうまく読めない人も、そう少なくないので、観客の人も、そう非手品人さんと変わらないと思いますよ。
悪意で失敗させようとされるのも困りますが、無邪気にマジックが失敗に追い込まれそうになることもあるので、本当に油断ならないです。
そういうこともある、と知っているだけで、ずいぶんと違うんですけどね。
でも演者は夢中ですもんね。
先日屋外でマジックショーを見る機会があったのは涼さんにお知らせしましたがその時、ロープマジックでマジシャンはステージに男の子を招き上げました。しかし…
その男の子は指示された場所以外のロープの箇所をどんどんハサミで切り落としてしまうのです(爆笑)
だけど、マジシャンも予想通りと分かっているし、観客は笑っているし、私も楽しめたし。
そんなのもマジックなのかな、と素人は思いました。
マジシャンにとって想定済みであればよいのですが、苦労しているマジシャンも見たことありますし、アクシデント対策はなかなか大変です(^^;)
「見えても大丈夫です、当てるわけではありません。」と言って
『当てるために取り出す(移動させる)』マジックから『取り出す(移動させる)』マジックにしてしまいます。
充分不思議です。
また、子供などにマークが難しければ色だけ覚えてもらうようにしてもらっています。
いいですね(^^)
居酒屋でやってるときは、覚えられない人も多いので、僕もあんまりカード当てをやらなかったりします。
それもいいと思います。