涼はくらしのマーケットに出張マジシャンとして出店しているが、今日はその売り上げアップ講座が無料で受講できるということだったので、参加してきた。くらしのマーケットでは、ハウスクリーニングや引越し業者などが最もよく利用されている様子で、一方の出張マジシャンの依頼はまだあまり栄えていないようだったので、時期尚早であるような気もしながら涼は参加を決めた。尚早のタイミングから先駆けていたほうがいいこともあるだろう。
  講座は典型例として最もニーズのあるハウスクリーニングを題材にしているところもあったから、涼はどうマジシャンとして応用させるかを考えながら聴かねばならない立場だった。ちなみに、涼以外の受講者は、やはりハウスクリーニングの専門家が多い。
  売り上げを上げる方法と言っても、この講座でマジックが上達するわけではない。集客できる出店の仕方、クリックされるページ作り、を学ぶセミナーである。
  涼は今まで、ページ作りにそう消極的でもなければ、そう積極的でもなかった。何もしないよりはマシだと思い日々少しずつ更新してはいるが、アクセス解析ができないので、何もフィードバックが得られずに、目をつぶっての試行錯誤だった。しかし、講座を受けて、方向性を間違っていたことを知った。
「聞いてよかった!」
  涼が想像する顧客の検索ルートは、
「マジシャン呼びたいからくらマで探そっ!」
というものだった。そう思っていたから、
「でも『くらマで探そっ!』ってなるのかな?」
と訝しんでもいた。しかし、くらマが想定していて、事実そうである検索ルートは、
「エアコン洗浄  東京」
というグーグル検索であり、これでくらマの東京におけるハウスクリーニング業者のランキングがヒットするようになっていたのだ。つまり、涼に関係するかたちにするのなら、
「福岡  出張マジック」
ということだ。もっとも、この形の検索が実際にされるのかというと極めて稀であろうし、それでいて今のところくらマがヒットするわけではない。少なくとも、くらマがこの検索で上位に来るまでは、涼が恩恵を受けることはできない。
「ま。それ以外にも勉強になることはいろいろあったけど」
  とりあえず、具体的には、待ちの期間であるということである。出店するマジシャンの数が増えれば、くらマの検索がより上位に来るということらしかったので、マジシャンが増えるのを待つしかない、ということにもなるが。
「だけど、今後の方向性は少し見えた気がする」
  要は、待ちの期間だと知れば、待ちの期間としての方策があるということだが、それを知らねば、来るはずがない依頼を日々待ち続けるような愚行を犯していた可能性もないではない。
  ページ作りも、少しは的を射たものにできそうである。



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