マジシャンの仕事はなかなかに激務であり、肩や腰の負担も大きい。少し前には、涼も腰を痛めたものである。
  涼は先日、リラクゼーション店でマッサージを受けた。体が楽になるのならば、さらに仕事を増やすことも可能になるのだから、体のメンテナンスは、別に節約するところではない。
  しかし、高いだとか効果がないだとかとはまた別の問題もある。
  涼は、強い指圧による揉み返しに悩まされていた。
「高いお金払って、余計痛くなるのは、さすがに勘弁してほしい」
  若い頃の苦労は買ってでもしろと言うが、若くなくなった涼は、お金を払ってまで無駄に痛い思いはしたくないところである。仕事にも支障が出そうである。
  マッサージ店は、良店を探すまでが難しい部分がある。


  そう思いながら、今日は恵比寿横丁で演じるべく、雨の中を移動中である。