バーマジシャンと居酒屋マジシャンは、職種が違うし、役割も違うと涼は思っている。観客のターゲットも、異なることだろう。
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バーマジックについて涼は詳しくないので、想像の部分が大きいが、マジックバーの観客は、自らの意思でお金と時間を使い、マジックを見に行こうと足を向けた客であり、確率的にはリピーターの可能性も大きいだろうし、マジックが好きな玄人の観客が多いことだろう。
「マジックって何?」
という客は、まずマジックバーの存在を知り得ないだろうと涼は想像する。
そうなると、自然とマジシャンに求められるマジックも、凝ったものになるだろうし、であるから、バーマジシャンの苦労のひとつは、
「それ見たことある」
と言われずに済むようなルーティン作りになることだろう。
居酒屋の場合は、そうではないので、あまり複雑なものは好まれない。単純明快で、すぐに終わるものの方が喜ばれるし、リピーター率も低いので、バリエーションを増やすよりも、回転効率を上げる努力の方が、より報われるというのが涼の手応えである。
「すぐ終わるの見せて。1分か2分ぐらいで」
という要求のほうが、凝ったマジックの要求よりもずっと多いし、2分の要求を叶えれば、それで2000円のチップをもらえたりもする。基本的に、居酒屋の観客は、長いマジックをじっくり見ようとは思っていないので、マジシャンもそれをよく理解しておく必要がある。
さて、このような違いから、バーマジシャンが居酒屋でやったり、あるいは逆の移動をしたとしても、すぐに上手く対応できるとは限らないのだが、涼の理念は、どちらかというと、居酒屋のほうにマッチする。
様々なマジシャンが、現状よりももっと多くの場所でマジックを観れるような環境を作りたいと考え、様々な活動をしているが、その中で涼の役割は、マジックの観客を増やすことを目的としている。
「いいマジシャンをたくさん育成する」
とスクールを運営するマジシャンもいるだろうし、
「マジシャンを増やしても働く場がない」
とバー経営やイベント会社を立ち上げるマジシャンもいるだろう。
涼の発想としては、
「マジシャンが働ける場所を増やしても観客がいないのでは、ね」
ということであり、マジックの面白さを、マジックを観たことのない人に伝え、
「今度から、マジックを選択肢のひとつに入れよう!」
と思ってもらうことを望んでいる。マジシャン人口ではなく、観客人口を増やすことを涼は活動目標にしていて、それを実現しやすいのが、居酒屋であり、ストリートである、ということなのである。
バーで演じることを誘われたりもするが、しかしそれを引き受けると、結局のところ、
「それって誰得?」
ということにもなる。バーの経営者は従業員が増えて給与出費が増えるだろうし、あるいは他のバーマジシャンの仕事が減って給料が減るかもしれない。それでいて、バーにいては、新しい観客開拓はできないのだから、涼の望みも叶わず、マジック市場は拡大しない。バーは基本的に、マジシャン不足で困ってはいないので、新しいマジシャンを受け入れることに対して、そうメリットはない。
むしろ、涼が居酒屋やストリートでやっているほうが、それを観た観客がマジックバーに行こうと考えるかもしれないのだから、バーに貢献できるであろうと思ってもいる。
そんな涼は、ただいまより大庄水産・武蔵中原店で演目の予定である。



コメント
コメント一覧 (2)
私なんて去年までマジックを見たことすらほぼありませんでしたから。
それなのに涼さんの観客の中に「私も出来ます」などという人が何人も出てくるなんて、驚きです。
観客がもっと増えてくるのなら良いと思います。
マジシャンが増えるのであれば、「プロマジシャン」が増えてほしいと思っています。
ストリートや居酒屋でやってる僕がそれだけマジシャンと会っているのだから、バーマジシャンはもっとたくさん会っていると思います。
観客目線では、それなりのレベルのプロマジシャンだと期待して見たいところですよね。