涼は、ここのところ通勤電車内で読んでいたトランプ殺人事件を読み終えた。



    ずいぶんと読みにくい作品ではあったが、最後まで読むと、なんとなくスッキリとした気分になれた。これはちょうど、ひとつ前に読んだ〇〇〇〇〇〇〇〇殺人事件とは間逆の印象だった。〇〇〜殺人事件のほうは、とても読みやすい口語的な地の文で、スムーズに読み進められたが、最後に尻すぼみのように感じてしまった。一方、トランプ殺人事件はというと、読みにくい文章だと思いながら苦労して読んだものだし、舞台となるトランプゲーム内容がまるでわからない、と不満に思っている中盤で、50ページにも及ぶルール説明を読まされたりして、
「今さら!?」
と悲鳴をあげたくもなったが、最後まで読むと、謎はスッキリと解決できるものだった。
    読みにくい文体だったのも、作中の登場人物による作中作であったからであると明らかになり、納得させられるのである。
    密室トリックもさながら、暗号モノとして読み応えのあるものだった。この作品の暗号は、読者が解けるようなものでは到底ないのだが、登場人物が推理をしてゆく過程は、読み進める上で、なかなかに興味深いものだった。

    巻末の後書きを読んで知ったことだが、この作品はシリーズの第3作であるという。順を追って読んでいれば、もしかすると登場人物たちにもっと思い入れができたようにも思うが、涼はいきなり今作を読んでしまったので、物語としてはともかく、キャラクターに愛着を抱くに至れなかったのが残念だった。たとえば、『院生』だと書いてあるので大学院生だと思っていた登場人物が、棋院(将棋スクール)の院生の小学生であったりと、登場時の紹介文で見誤ってしまうことも、涼の場合は多かった。しかもこの人物が、子供とは思えぬやたら大人びた口調であったりするので、なおさら間違いやすいのだ(それこそ叙述トリックを思わせるほどだった)。登場人物の絵が頭に浮かばない状況で、読み進めなければならない点には苦労をさせられたが、読み終えると、
「もう1回最初から読んでみようかな」
と思えるような作品だった。


 さて、今日の涼は上野横丁(上野産直飲食街)にて仕事である。
「ご来店をお待ちしています!」




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