マーフィーの法則にまだ入っていないのならば入れてほしいルールのひとつに、
「宅配便は留守中にやって来る」
というものがある。
 明日が引っ越し日である涼は、今日はゴミを捨てたり荷造りをしたり、ということをやっている。ソファーベッドを処理するのには廃品回収業者を呼んだ。
 12時から14時までの時間枠で依頼していたのだが、前日に電話があり、混んでいるので遅くなる可能性があると言われていたので、涼は15時ほどまでは自宅で待機していた。が、それでも来なかったので、外出をしたわけだが、出かけた途端、着信があり、
「あの。お宅の前まで来たのですが、ご在宅ですか?」
という電話がかかってきた。
 12時から16時までの時間帯のうち、涼が外出したのは15時10分から15時30分だけであるのだが、狙い撃ちをするようにその時間にやって来るのはどういうわけだろう、といつも思う。

 遅れそうだとは言うものの、頑張れば時間内に間に合わせられるかも、という口ぶりでもあるので、涼は当初の予定時間内に外出するわけにもいかず、一方、目的の郵便局の営業時間は16時までであるので、いつ来るともわからない業者を待ち続けることもできず、悩ましい思いをしながら外出をしたわけだが、ピンポイントでその時間にやって来るのを見ると、業者はずっと涼のことを監視していて、外出を見計らってやって来たのではないかと勘ぐってしまうほどである。

 時間指定をしたのでずっと待ってはいるものの、トイレに入った1分の間にやってきて、不在票を入れて帰られたこともある。指定する時間枠が30分間程度なら、玄関でずっと正座して待っていることもできるだろうが、2時間の枠であればトイレにも行きたくなるし、4時間の枠であればコンビニぐらいには出かけたくなる。
 枠が後ろにずれると言うのであれば、
「12時から14時だったのが、13時から15時になりそうです」
と12時から13時をフリーにしてもらいたいところである。ただただ待機時間を引き伸ばされても、今回のように別の要件で外出せねばならない事情もあったりする。

 今回は廃品回収であったが、宅配業者が忙しいという話はよく聞くし、涼もなるべく協力したい気持ちではあるのだが、現実的には協力するのがかなり難しい。今回も、協力したい一心で3時間を待機したものの、それが一切報われない上に、結果的には全く協力的ではない人と同じ形になったわけである。
 指定時間の枠を広げれば広げるほど、こういうことは増えていくと思われるので、忙しい業者は、むしろ枠を狭める方向に考えを進めるべきだろうと思う。指定時間枠が14時~16時であるよりも、15時~16時であるほうが、受け取り側も協力しやすく、結果的に再配達が減るのではないかと、涼は思っている次第だ。





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