気が付けば、3月ももう中旬になってしまったが、涼は日々執筆作業を行っている。なかなか思うように進まないと、頭を抱えるのも、いつものことである。
 作品を書き始めるにあたって、最も面倒な作業は、涼の場合は、登場人物の名前を決めることである。これが人物の特徴として最も重要なものではあるのだが、しかし、別にどんな名前であったとしても、物語にはさほど影響しないものであるし(名前に暗号が隠されている、などの場合は別だが)、あまり奇抜なネーミングにすると、読者に、
「これが犯人か?」
と先入観を与えてしまうかもしれず(ドラマなどでは、大物俳優だから犯人クラスの大役を演じているだろう、という邪推はよくある)、また逆に、
「大層な名前だけど、最初に死ぬ奴か!」
などと言われてしまうのもどうかと思い、一般的な名前を一生懸命考えなければならないわけである。
 それでいて、一般的な名前にすると、同姓同名の実在の人物がたくさんいるであろうし、
「あ。この人、廣木涼の作中で殺人犯だった人と同じ名前」
などと涼の知らぬどこかで会話があることは、ある意味光栄ではあるが、それで不都合があるといけないので、なるべく実在しない命名にするように考えなければならない。今の時代は、ネットで名前を検索すれば、すぐにたくさんのページがヒットするので、同姓同名がたくさんヒットすれば他の名前に変える、という手法を命名するにあたって利用している。ちなみに、考えた名前の8割方、誰かのFacebookがヒットするので、涼は登場人物の5倍の命名を行わされることになっている(苗字と名前の組み合わせを入れ替えるとか、名前の1文字を変えるとか、その程度の変更で済むことが多い)。
 もちろん、登場人物の年齢と名前のギャップについても、よく考えなければならない(3歳児の名前と70歳老人の名前は、同じではいけない)。
 また、ずいぶん執筆が進んだ段階で、登場人物の名前の響きが似ていて区別がつきにくい、と気付くこともままあり、遡って名前を変えるようなことも時にはある。人物設定は、書き始める前の段階で、ある程度は定めておくのだが、書いているうちに、設定を変えたり追加したりしたくなることもよくあり、今では、初期段階ではあまりギュウギュウに定めないようにしている。涼はそうしているのだが、このあたりは、他の作者の方法を聞いてみたいと、涼はいつも思っている。まだそれほど作品数が多くはない涼は、やり方が完全には定まっていない。




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