マジシャンも、ジャンルとしては芸能人になることだろう。涼も、歯に気を付けていて、1年に1度か2度は歯科検診に行っている。今日も歯科検診に行き、ティースクリーニングをしてきたのだが、
「虫歯になる気配もないね。完璧ですね」
と歯科医に言われて、気を良くしているところだ。

 爪を磨くことといい、歯のメンテナンスをすることといい、スーツにアイロンをかけることといい、声が枯れないための漢方薬の件といい、仕事をするにあたって涼が気にしている点は、ほとんどがマジック以外の部分にある。アマチュアのときには、そこにお金をかけるという発想もなかったところに、仕事人としては予算を割くことにもなった。もちろん、かけた予算以上の利益を出すという目論見であるわけだが、そんなことを考えるようになったのも、職業マジシャンになってからのことだ。
 アマチュア時代は、それこそ『プロ級のマジック』ができるようになりたい、などと思ったりもしていたが、今となっては、どちらかというと、超絶技巧などよりも、
「初級のマジックでも、プロが演じればこのレベル」
といったような方向に興味が移っている。
 同じマジックでも、演者が違えば、結果が違うことだろう。簡単なマジックだからと、タネを軽んじたりせず、どうすればより良く不思議を演出できるかを考えて、研究しながら演じていく必要がある。
 涼は、自戒も込めて、そう思っているところである。



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