涼がマジシャン活動を始めた当初から、よく聞いていた話ではあるが、高価な腕時計をすると収益が上がるという話がある。
　居酒屋ではよくチップが入るようになるし、同じような高価時計を持つ観客と仲良くなれて依頼が来たりするようになるらしい。
　半分は実話で、半分は都市伝説であるような気もする涼だが、以前より、試してみたいことだとは思っていた。今になって、腕時計に予算を回せる算段になり、今回、少々値の張る時計を購入した次第である。
　と言っても、高級時計の世界は天井がなく、100万円もあれば1000万円もあるので、いくらの時計をもって『高級時計』と言えるのかはよくわからないのだが、今回の涼の予算は20万少々といったところだ。もう1桁上の時計もある中で、この値段は、『中級』というところかもしれないが、マジシャンとしての今の涼のレベルでは、ひとまずこれが限界ということである。
　　
　　
　さすが高級時計ということだろうか、ホールケーキが入るかと思うような大きな箱に入ってくる。





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